70年以上にわたり、夏の肌着として愛され続けてきたアサメリー。
その心地よさは、素材の良さだけで生まれているものではありません。
今回、アサメリーの編み立てを担う阪和株式会社と、染色・加工を担うフジボウテキスタイル和歌山工場を訪ね、その一枚の生地ができるまでにある、たくさんの技術と工夫を見てきました。
糸の個性を生かす、編み立て
アサメリーの生地を編み立てているのは、和歌山の丸編み産地で長年ものづくりを続けてきた阪和。
工場長にアサメリーの生地について説明していただく中で、まず印象に残ったのが「糸の違い」でした。
アサメリーには、110番手の双糸をガス焼きした強撚糸が使われています。
毛羽を取り除くガス焼きによるシャリ感と、強く撚りをかけた糸。その特徴が、アサメリーならではのさらりとした肌ざわりや、通気性、身体に沿うような伸縮性につながっています。

一方で、強く撚られた糸は扱いやすい糸ではありません。
糸がたるむと、撚りが戻ろうとして「ビリ」と呼ばれるねじれが起こり、編み機が止まったり、きれいに編み上げられなかったりすることがあります。そのため、ビリ止めを使いながら、機械にかけるテンションも細かく調整していきます。

そこで工場長が話してくださったのが、
「糸は生き物」
という言葉でした。
湿度など、その日の環境によって糸の状態は微妙に変化します。
その変化を見ながら、機械の設定やテンションを調整する。長年、糸と向き合ってきた職人だからこそ分かる、わずかな違いへの対応です。

アサメリーは、編み目の密度である「度目」も特徴的です。ゆったりとした度目で編むことで、薄く、軽く、通気性のよい独自の編み地が生まれます。
しかし、ゆったりと編むからこそ、編み目を均一に保つには細かな調整が必要です。サイズが変われば機械にかかるテンションも変わるため、サイズごとに適した機械を使い分けています。

アサメリーを編む丸編み機には、1,000本を超える針が使われます。
その針を一本一本セットし、編み方を設定していくのも職人の仕事。
機械が自動で生地をつくっているように見えて、その一枚の生地には、人の手による細かな調整が積み重なっています。
さらに、アサメリーはガス焼きをした糸を使うため、編み立ての際には細かなカスが出ます。ファンで飛ばしたり、機械をこまめに清掃したりと、アサメリーだからこそ必要になる手入れもあります。
「良い素材、良い糸を使えば、良い生地が自然にできる」というわけではなく
その糸の個性を理解し、どうすれば一番良い状態で生地にできるのかを考え続ける。
そこにも、アサメリーの品質を支える技術がありました。
色をつける、その前から始まる染色
編み上がった生地は、フジボウテキスタイル和歌山工場へ。

フジボウテキスタイルは、富士紡グループのものづくりを担う工場のひとつ。長年培われてきた技術を生かし、世界のブランドの品質基準にも応える、まさに日本のものづくりを支える現場です。
染色というと、「生地に色をつける工程」と思うかもしれません。
けれど実際には、色をつける前から品質を整える仕事が始まっています。
編み立てたばかりの生地には、編み機の油や細かなカスなどが付着しています。そこでまず「精錬漂白」を行い、生地をきれいな状態へと整えてから染色へ進みます。
その後も、色のブレがないか、生地が均一に染まっているか、染色の過程で生地が傷んでいないか。一つひとつの状態を機械だけでなく、人の目でも確認しながら加工を進めていきます。

そして、70年以上続くアサメリーだからこそ、守り続けているものと、時代に合わせて変えてきたものがあります。
かつて白い肌着をつくるために行っていた塩素漂白は、現在では水素を使った漂白へ。
アサメリーらしい白さをできる限り保ちながら、環境への配慮も考えた方法へと変化しています。
一度の工程で終わらせるのではなく、状態を確認しながら漂白を行い、生地そのものへの負担にも目を配る。
70年以上続く品質を守ることと、今の時代に合ったものづくりをすること。
その両方を大切にしている姿勢が、印象に残りました。

「丸編みのまま」にこだわる理由
アサメリーには、もうひとつ特徴があります。
それは、丸編みした筒状の生地を、その形のまま製品へとつなげていくこと。
一般的には、筒状に編んだ生地を開いて平らな状態にしてから染色することも多い中、アサメリーは丸編みの状態を保ったまま染色・加工を行います。

反物を開く工程は「開反」と呼ばれます。生地を開いた状態にすると用途の汎用性が高まり、一つの生地幅から複数サイズの製品を効率よく裁断することも可能になります。
しかしアサメリーでは、この方法を採用していません。理由のひとつは、脇に縫い代が生じないため、より快適な着心地を実現できることです。また、裁断箇所を少なくできるため、希少な生地のロスを最小限に抑えられるという利点もあります。
ただ、筒状を保ったまま染色加工するには専用の設備が必要で、さらにその機械を扱うための経験も欠かせません。
染色を終えた生地は、そのままではシワが残った状態です。そこから生地を機械に通し、スチームで熱を加えながら、きれいな幅と状態に整えていきます。

そして、次の縫製工程へ。
一つひとつの工程を丁寧に仕上げるだけでなく、「次の人が扱いやすい状態で渡す」というところまでをものづくりの一部として考えているのです。
一枚の生地の、その先に
今回、二つの工場を訪れて感じたのは、アサメリーの品質はひとつの技術だけで成り立っているものではない、ということでした。
糸の状態を見ながら編み立てる人。
度目やテンションを細かく調整する人。
生地を精錬漂白し、染める人。
色や生地の状態を目で確かめる人。
丸編みの生地を丁寧に整え、次の工程へつなぐ人。
それぞれの工程に、それぞれの技術と経験があります。
そして、そのすべてに共通していたのは、アサメリーというひとつの商品に対する思いでした。
70年以上続いてきたものだから、ただ昔と同じ方法を守るのではなく、時代に合わせてより良い方法を取り入れる。
それでも、アサメリーらしい着心地や品質は変えない。
長く愛されてきた理由は、完成した一枚の肌着だけを見ていては分からないのかもしれません。
和歌山の工場で、一枚の生地に向き合う職人たちの仕事を見て、アサメリーの心地よさの背景には、目には見えないたくさんの技術と手間、そしてものづくりへの想いが積み重なっていることを知りました。
これからも、その一枚ができるまでの時間も含めて、アサメリーを届けていきたいと思います。